83.ミメット鉱 Mimetite (メキシコ産) |
鉛と砒酸と塩素の化合物で、黄鉛鉱ともいう。
砒素が燐に代わったものが緑鉛鉱(No.3で紹介)で、両者は類似の鉱物、というか、純粋な両者を端成分とし、砒素と燐が任意の割合で混ざり合った状態のものが存在する。黄色い緑鉛鉱もあれば、緑色の黄鉛鉱もあり、見ただけでは、どっちなのかわからない。
ただ、緑鉛鉱よりも、ミメット鉱の方が、ずっと産出が少なく、面白いことに、ひとつの産地から両方が採れる例はあまりないらしい。いったん砒素と燐の調合が定まると、あとは材料がなくなるまで処方箋通りのものが出来続けるのだろう。律儀なことだ。
上の写真のようにぶどう状になったものは、見ていて微笑ましい。抹茶を搗き混ぜた葛団子かマシュマロを、ザラメ砂糖の上に載せているようで、可愛らしくて、美味しそうに見える。このテのものは、ミメット鉱に多い。
イギリスのカンバーランド地方には、本来六角柱状の結晶が、中央で膨らんでころころした感じになったものがあり、カンピ石という亜種名がついている。分類上はミメット鉱になる。燐より砒素が多いわけで、どうやら、ミメット鉱の方が形状の自由度が高そうだ。
その名はフランスのビューダン(1832)が与えたミメッテーズ mimetese に遡る。緑鉛鉱に似て非なるものであることから、「マガイもの」の意という。彼に中間組成の標本を示したら何と言っただろうか? 本モノ・偽モノではなく、兄たり弟たり、と認識を改めたろうか?