166.バナジン銅鉱 Volborthite  (チリ産)

 

 

クリソコラ上のバナジン銅鉱(ボルボース石)
−チリ、シエラ・アマリーリョ産

 

蛍光がかった黄緑色をした鉱物。No.164の赤いバナジン鉛鉱に対し、豊穣なる女神ヴァナディスのもうひとつの顔である緑色を見せている。バナジウムに起因する緑としては、エメラルドツァボライトの発色が思い浮かぶが、本鉱も美しさでは劣らない。あるいは銅も発色に関係しているのかもしれない。青緑色のクリソコラ上に散らばった様子は、さらに魅力的だ。
学名はウラルのニジニ・タギルで最初にこの鉱物を記載したロシアの古生物学者、アレクサンドル・フォン・ボルボース(ボルボルト)に因む。バナジン酸基[VO43が2個重合した形のパイロバナジン酸基[V2O74-を持つ。

下の標本は、バナジン銅鉱の有名産地のひとつ、モニュメント1号鉱山で採れたもの。ここでは、カルノータイト、チューヤムナイトなどの希産バナジウム鉱物を伴って産する。標本ラベルにカルシオ・ボルボータイトとあり、カルシウムを含むバナジン銅鉱といった位置付けか。便覧によればコニカルコ石(コニカルサイト)の類縁鉱物にあたるようだが、詳らかにしない。

追記:バナジン銅鉱(ボルボース石)は組成 Cu3V2O7(OH)2·2H2O。1837-38年頃ウラルのペルミに報告され、当初は knaufite と呼ばれたが、後に A.v.ヴォルボース(1800-1876)に献名されて今の名となった。ヴァナジウムを含む熱水銅鉱床の酸化帯に生じる珍しい二次鉱物。ブロシャン銅鉱、孔雀石、アタカマ石、クリソコラ等と共産する。

下のモニュメント1号鉱山産の本鉱は長年、Calciovolborthite 灰バナジン銅鉱と呼ばれてきたが、今日では Tangeite タンジェアイトと標識される。Tangeite はキルギスタン、フェルガナ盆地のタンジェ峡産のものを A.E.フェルスマンが 1925年に報告した名で、後に原産地の標本を再調査したところ、Calciovolborthite と一致することが分かり、古い方の名前が採用されるようになった。組成式 CaCu(VO4)(OH)。ちなみにモニュメント1号鉱山は西部劇のロケ地として有名なモニュメント・バレーのすぐ近くにある。この付近には 19世紀末頃に稼働した廃坑がいくつかあり、1号もそのひとつ。

灰バナジン銅鉱−USA、AZ、ナバホ、モニュメント#1産

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