328.クリソタイル Chrysotile (カナダ産)

 

 

クリソタイル石綿 (蛇紋石の一種)
−カナダ、ケベック、アスベスト、ジェフリー鉱山

蛇紋石に伴うクリソタイル石綿の脈 
クリソタイルとはギリシャ語で「金色の繊維」 Chrusos(金) + tilos(繊維)
−USA、AZ、グローブ郡産

 

石綿(アスベスト)とは耐炎耐熱性を特徴とする繊維状珪酸塩鉱物の総称で、蛇紋石系の鉱物であるクリソタイル(白石綿・温石綿)、角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、直閃石(アントフィラント)、透閃石(トレモライト)、緑閃石(アクチノライト)などが含まれる。

青石綿や茶石綿は、強い発ガン性を理由に1995年から国内での使用が禁止されたが、機能的に優れるクリソタイルは、比較的危険性が低いといわれ、その後も継続使用されてきた。しかし代替品への移行が進んだことを受け、2004年10月から事実上(製品成分中に1%以上含むもの)の製造禁止品になった。こうした動きは世界的な流れである。

石綿の欠点は素材の物理的形状にあり、採掘、加工、あるいは使用の際、眼に見えないほどの繊維が空気中に飛散し、人体組織に突き刺さりやすいこと、かついったん摂取すると、なかなか体内から排出されないことである。
石綿鉱山従事者や鉱山周辺住民の肺ガン率が有意に高いことは、すでに1960年代から注目されていた。廃絶に向かうまで実に40年かかったことになるが、それだけ産業的に有用な物質でもあった。

絹糸光沢を示す標本はなかなか美しいものだが、鉱山が廃業してゆくと、だんだん入手が難しくなるかもしれない。もっとも虎目石(タイガーズ・アイ)や鷹目石(ホークス・アイ)のように、石綿が石英に含浸された鉱石は今後も供給・利用が続くと思われる。
なお、直閃石や透閃石石綿は、産出量が商業レベルに至らないため、国内ではほとんど使用実績がない。従って禁止もされていないが、害がないわけではないので念のため。(→参考No.329

ちなみに、江戸時代に平賀源内(1728-1779)が作った火浣布は、秩父産の繊維状蛇紋岩(石綿)を素材にしたと言われている。

追記:平成17年7月1日より石綿障害予防規則が施行され、含石綿建築物の解体等にあたっても規制が強化された。
追記2:最近、石綿による環境被害のニュースが頻繁に取り上げられているが、厚生労働省は「石綿等の全面禁止等に係る労働安全衛生法施行令等の改正」(案)を公表し、平成18年9月1日の施行を目指すという。規制対象を重量の1%から「0.1%を越えて含有するもの」とする等、より厳しい規制措置が取られる。が、「0.1%」という数値をどうやって保証するのか疑問である。 (2006.7.28)
追記3:厚生労働省は19年3月16日付で改めて石綿取扱禁止の周知徹底を通達した。前記施行令の改正が一部において遵守されていないことが散見されるためという (2007.6.5)
追記4:24年3月、これまでガスケット材など代替物がないため例外とされていた物品も、代替品が開発されたことを受けて使用禁止となる。これをもって国内ではアスベスト製品の製造が完全に終わる。

cf.蛇紋石グループの分類 ⇒ No.331 補記

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