345.カロール鉱 Carrollite (コンゴ産)

 

 

カロール鉱(銀白色の結晶) -コンゴ、シャバ、カモト鉱区産

 

貴重な合金素材であるコバルトは、商業上たいてい別の金属を精錬する際の副産物として得られる。その平均地殻濃度は20ppm(0.002%)であり、熱水作用等により濃集された鉱床でも、通常コンマ数%以下の含有量にしかならないからだ。
カタンガ・クレッセントのコバルト鉱の品位は1%を越え、文句なしに富鉱とされる。特に上部酸化帯に高品位の鉱石が存在するが、それでも採算性をクリア出来ず、銅が主力、コバルトは副業的に生産されているのが現状という。

硫化鉱であるキャロライトは事実上カタンガ地方唯一の初生コバルト鉱石である。組成式は Cu(Co,Ni)2S4 と表現されるが、本産地では(一部地域を除き)、 Ni/ニッケルをほとんど含まない。銅成分をコバルトで交代した種、リンネ鉱 CoCo2S4 は同地ではごく稀であり、結晶構造の異なる硫化コバルト、カチエル鉱 CoS2 も、原産地こそカタンガのShinkolobwe鉱山ながら、量的にとるに足らない。
主に塊状で産し、同じく塊状の硫化銅鉱(黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱など)と共産する。カモトを含むいくつかの鉱区で、苦灰質の岩床に乗った美しい結晶が知られている。等軸晶系で自形は立方体か、これと八面体の組み合わせ。
ちなみにここの層状鉱床では、輝コバルト鉱 CoAsS は報告されていない。地層に砒素が含まれないからだ。(キプシやツメブの鉱山にはある)

追記:カロール鉱は米国メリーランド州キャロル郡のパタップスコ鉱山から報告されたコバルト鉱で、英語読みだとキャロライトだが、日本語では訛ってカロール鉱と読むのが普通。1852年、W.L.ファーベルの命名。
美麗結晶標本は歴史的にむしろ得難い種だったが、20世紀後期からコンゴのウラン-銅-コバルト鉱床地帯に産する良品が相次いで市場に供給されてきた。

カンボーブ kambove 鉱山、 カモト・フォンド(フォンドは地下坑道採掘であることを示す)、カモヤU(南カモヤ)地域がその主要産地。カンボーフ産の標本は 1970年代から80年代にかけて西洋市場に現れた。後の2010年代にも現れたが昔のものとは趣が異なるという。サイズは 1.5cm程度まで。
カモト・フォンド産は 1990年代が収穫期で、潤沢に供給され、かつ品質もカンボーブ産を凌駕した。良晶は普通、方解石や苦灰石の母岩の空隙に見い出される。3cm大のものが出た。

そして 2000年の末頃、カマヨUに発見された結晶は、さらに巨大で品質も優れていた。ぴかぴか光る、野球ボール大のものがあったという。また黄銅鉱の仮晶として生じたものもあった。市場に出た当初は kamfundwa 露天掘り鉱山産と標識されたが、これは本当ではなかった。
初ロットの結晶は採集時に生じた欠損が目立っていたため、扱った標本商さんは 2001年のツーソンショーが終わるとすぐコンゴにとって返し、望ましい採集方法を鉱夫らに教えた。母岩付の結晶がいかに大切かを説いたところ、その後、方解石の母岩に結晶を接着した標本が提供された、という笑い話がある。しかし翌年からは比較的丁寧に採集されたと分かる良品が出てくるようになった。

画像の標本は 2000年の新宿ショーで、来日された標本商ジルベール・ゴーチェ氏(1924-2006:ベルギー人)から購入したもの。ゴーチェ氏はコンゴ産のウラン鉱物やコバルト鉱、ピンク方解石等をよく扱った方で、ウラン鉱物の生き字引の観があられた。cf. No.536
カロール鉱については「もう手に入らないと思う。値段も上がっていくから今買うことをお勧めする」と仰っていたが、それからすぐカマヨU産が一層潤沢に出てきたのだった。
ホリ通販リスト 125号(2006)には、近年までヨーロッパの業者が独占的に扱っていて高価だったが、最近は地元業者が扱えるようになってリーズナブルになった、と述べられている。それもあろうし、玉数が増えたのも大きかっただろう。
余談だが、ベルギーとコンゴは歴史的に縁が深く、ベルギー本国ではコンゴから来た黒人をよく見かける。 cf. ワロン・フェスティバル2
ゴーチェ氏の名は後に(2016年)、カンボーブのシンコローヴェ鉱山原産の新種ウラン鉱物ゴーチェ石として残った。(2023.6.11)

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