376.カルセドニー Chalcedony (USA産) |
カルセドニーという言葉は古く、もとはギリシャのカルケドンの銅山に産した緑色の石(翠銅鉱か緑柱石?)を指したといわれるが、今では語源のよく分からなくなった名前である。(cf.
No.742)
現在は不定形の潜晶質石英の類、特に鍾乳状や仏頭状の表面をもったもの、脈を埋めて二次的に生成したとみられるものにその名が与えられているようだ。
昨年、ボストン・ミュージアムでバビロニアの円筒印章に乳青色の玉髄を使ったものが展示されているのを山ほど見て、キレイ〜〜と唸ったけれど、個人的にはきっとこの種の色あいの石こそ、カルセドニーと呼ばれるに相応しいものだろうと思う。でも一般にはさまざまな色の石をカルセドニーと呼んでおり、乳青色のものは頭に色名をつけてブルー・カルセドニーの名で扱われる。上の標本はその典型的なもの。
カルセドニーは母岩となる火成岩や堆積岩に生じた空隙に、珪酸分に富んだ鉱水が浸入し、長い時間をかけて非流動化(析出/沈殿)したものと考えられている。生成温度が低い時、鉱水は粘って十分な流動性を欠く。珪酸分子は結晶構造に従って互いに整列することができず、いわゆるオパールと呼ばれる非晶質石英が生じる。それがさらに長い時間をかけて構造を組み替え、秩序を具え、潜晶質石英に変化するといわれている。
従って、この種のカルセドニーまたは玉髄またはめのうと呼ばれる石は、部分的に晶質であり、また別の部分が非晶質であることも珍しくない。
もちろん初めから潜晶質石英として生成(析出)したと考えられる場合も多い。
下の標本は母岩つきのカルセドニーで、母岩内部を走る脈状の空隙を石英が充たしていることがよく分かる。層状の縞模様や年輪模様が形成されており、おそらく外周から空隙の芯へ向って析出が進んだことを示している。
このように縞目がはっきりしているものは、めのうあるいは縞めのうと呼ばれることもある。玉髄はある程度の透明性をもった、比較的一様な塊を呼ぶ場合が多いように思うが、カルセドニーの和名として与えられることもある。
…厳密な定義はやはり私はよく分からない。
ほかのページのカルセドニー(と呼ばれるもの)
No.15(部分的にオパール)
No.128(貝殻のスキマを埋めたもの −透明感なし)
No.194(蛍石後の仮晶)
補記:益富博士は、結晶質を結晶の粒度により、
1)顕晶質:肉眼、ルーペで粒を認めうるもの
2)微晶質:顕微鏡か直交ニコル下で認められるもの
3)潜晶質:高倍率でないと見えないもの
に区別し、めのうや玉ずいは 2)の微晶質にあたるとされている。