385.ジャスパー Bruneau Jasper (USA産)

 

 

Bruneau Jasper

ブルノー・ジャスパー -USA、アイダホ州ブルノー産
(切断研磨面)
 

ジャスパー(Jasper)とカルセドニー(Chalcedony)、あるいはメノウ(Agate)との違いは何か?
石英を主成分とし、不純物により成因により、彩々の色や模様の組み合わせを示す石は世界中に何百種類とあり、昔からそれぞれに呼び名があった。上述の3つの名前は、おそらくある時代、一地方に産する石英の亜種につけられた固有名詞だったのが、いつか類似の石を代表する分類名として扱われるようになった…と仮定するなら、その制約の下に、不十分ではあってもゆるやかな定義を試みることが出来そうだ。
つまりこれらの単語によって、バリエーションが無数に存在する石英類の相当部分を、ファジィな境界を帯び、互いに重複する領域が許される(例えば、メノウでありジャスパーでもあるといった)イメージの集合として、便宜的に分類しうるだろう。
(このようにシチめんどくさく考えることで、深緑色の出雲石も、佐渡の赤玉も、目にあやな津軽錦石も、まとめてジャスパーの和名、碧玉(へきぎょく)の名で呼んだり、縞目のない紅玉髄をメノウと呼ぶことへの違和感が和らごう)

メノウは酸化鉄などの「微量の」不純物によって色づいたカルセドニーの一種で、層状に析出・積層したことを示す縞模様や同心円模様のある石英だ。カルセドニーは縞目のはっきりしないメノウである。ジャスパー(碧玉)はメノウより不純物を多く含んだ石英で(通常20%以上)、透明感がない。模様はあるとしても不規則で、別種鉱物との混合によって描出される場合もある。

ところで肉眼的な区別とは別に、鉱物書には学術的な相違点が示されている。
すなわち、これらはいずれも(時に水分を含む)顕微鏡的な微小石英結晶の集合体であるが、カルセドニーやメノウはファイバー状の平行組織を持ち、ジャスパーは砂糖のような粒状の組織を持つことで区別出来るというのだ。
カルセドニーの微細なファイバーは、ベルベット状に生え重なって層をなし、層の上に層が重なってゆく。層間で色が変わるとメノウの縞模様が出来る。ファイバーが集まっているためきわめて強靭で、かつ光学的に半透明の性質を示す。
一方、ジャスパーの組織は不定形の粒状で、強靭だがメノウのような縞模様を形成せず、塊は不透明になる。
とはいえ、自然界には双方の性質を具えた石が沢山あり、例えばブラッドストーンやクリソプレーズでは、ファイバー状の部分と粒状の部分とが、ミリサイズ〜センチメートルサイズで斑状に隣合うことがある。

結局、白か黒かの厳密な定義は、不純石英にはあまり似つかわしくなさそうだ。

さて。
上の標本はアメリカ、アイダホ州特産のジャスパーで1960年代〜70年代初の採集品。オウィー郡ブルノー峡谷南方約80キロの場所に産することから、ブルノー・ジャスパーと呼ばれる。トマトスープの中にアイダホポテトをぶっこんで、固めて輪切りにしたような、他に類のない切断研磨面を見せ、ラピダリーに珍重されている。
ブルノー・ジャスパーは、流紋岩が形成される時、ガスが抜けて出来た気泡に珪酸分に富んだ鉱液が浸入し、冷え固まって形成されたといい、この次第は、No.375のメノウ(リトフィーズ)やNo.381のオパールと同じことだ。実際当地では、ジャスパーのほかにカルセドニーやオパールが空隙を埋めた石が見つかっている。
ブルノーの採石場は、2003年の秋時点で、一ケ所を除いて閉止されており、再開の見込みはないという(保護区に含まれるため)。

参考:めのうギャラリー No.18 縞状構造はメノウというに相応しいが、不透明な赤い層はジャスパーとするべきか。

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