408.鍾乳状玉髄&水晶 Chalcedony (ブラジル産ほか) |
珪酸成分に富んだ熱水から水晶や玉髄、あるいはオパールが作り分けられる仕方は、No.376(玉髄)やNo.377(オパール)で書いたように温度条件が大きなファクターとなっている。と同時に水晶には大きな単結晶が成長できる条件(自由な空間等)が必要であり、玉髄には結晶が成長する起点となる核が多数存在している必要がある。
熱水中に核(タネ結晶)が形成されるのは、その後核の上に結晶が成長してゆくのに比べてはるかに困難なので(参照⇒「結晶する不思議」)、もし最初に少数の核が出現したときには、これらの上に優先的に珪酸が析出して、比較的大きな結晶(=水晶)が出来やすいし、逆に多数の核が出現したときには、成長の養分である珪酸はそれぞれに分散されて小さな結晶(=玉髄)にとどまりやすい。
また新しい核が次々と出現して、すでにある核や微小結晶の成長を妨げるのでなければ、玉髄はやがて水晶にとって替わられるだろう。
例えば、生成の途中で過飽和度が下がったり、熱水の温度が下がって(おそらく100℃以下)珪酸分子の運動の自由度が落ちたりすると、そういうことがおこる。No.376の2点の標本はそのよい例で、晶出の最終段階で玉髄でなく水晶(質)が出来ていることが分かる。
このページには鍾乳状の玉髄と水晶とを並べてみた。両者の違いは結晶の大きさや形状(一般に玉髄は細柱状〜繊維状)、また水分を含有するかどうか(一般に玉髄は水分を含む)などにあるが、これにNo.50やNo.318の晶脈状水晶を並べてみると、ひとくちに水晶といっても、柱面を見せて大きく成長したものから、族生するため頭の形だけが認められるもの、ルーペでみないと水晶と分からないもの、そして潜晶質の玉髄の一歩手前にいたるまで、さまざまなサイズをとって晶出しうることが分かる。ある微小サイズの領域では、水晶か玉髄か区別しがたいケースも存在するはずである。