570.毒鉄鉱 Pharmacosiderite (イギリス産)

 

 

Pharmacosiderite 毒鉄鉱

Pharmacosiderite 毒鉄鉱

毒鉄鉱 
−イギリス、コーンワル、ウィール・ゴーランド、セント・デイ産

Pharmacosiderite 毒鉄鉱

毒鉄鉱 −ドイツ、黒森、クララ産

 

カリウム(ナトリウム)と鉄の7水和水酸砒酸塩鉱物で、砒酸塩としては珍しい等軸晶系の構造を持つ。水分をわりと多く含んでおり、これは沸石水のように出入りが可能という。かっちりしたサイコロ状の結晶形を示し、発見当初 Cubic Ore (立方体の鉱石)と呼ばれた。学名は1813年にハウスマンが与えたもので、ギリシャ語の「毒」と「鉄」とに因んでいる。和名も学名に従って毒鉄鉱。この場合、毒は砒素成分を指す。硫砒鉄鉱が毒砂と呼ばれるのと同じだ。原産地としてコーンワルの鉱山が複数共載されている。
ちょっと見、蛍石にも似ているが、蛍石のような明確なへき開はなく、破面は貝殻断口になる。またモース硬度は2〜3で、指の爪並みに柔らかい(蛍石は硬度4)。もっともミリサイズを超える大きさになることはまずないので、蛍石と間違うような標本に出逢うことはあるまい。
複屈折性を持ち、偏光をあてると縞模様が観察できる、とモノの本にあるので試してみたが、よく分からなかった。(いかんせん結晶が小さすぎる)

色調はラドラム鉄鉱に通じる、暗く彩度の低いオリーブ緑色が代表的だが、茶色〜蜂蜜色、エメラルド色、赤紫色など、かなり幅がある。緑色のものはアンモニア溶液に漬けるとアンモニアを取り込んで特徴的な赤色に変化する。さらに2分の1に希釈した塩酸に漬けると再び元の色に戻る、とこれもモノの本にあって面白そうだが、貴重な標本で試すわけにはいかない。

鉄を含む鉱脈の酸化帯に生じる二次鉱物で、硫砒鉄鉱、砒四面銅鉱などの初生砒化金属鉱から派生する。必要な成分を含んだ熱水溶液からも生成するが例は少ない。
同様の産状に出る鉄の砒酸塩にスコロド石がある。これは現在イギリス、デボン州産の標本が白眉として知られる。

cf. No.666 毒石(Pharmacolite) - ファーマコンには毒薬と治療薬の両義がある。

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