571.斜開銅鉱 Clinoclase (USA産)

 

 

Clinoclase クリノクレース

Clinoclase 斜開銅鉱

クリノクレース−USA、NV、マジューバ鉱山産

 

 

クリノクレース・斜開銅鉱は銅の水酸砒酸塩である。わりと珍しい二次鉱物で、風化作用を受けた硫化銅鉱床の上部酸化帯にぶどう状の球顆をなし、母岩の間隙をベタリと覆って生じていることが多い。一般に濃い藍青色のためにくすんで見えるが、破面に覗く針状結晶が集合した放射柱面は、表層よりも色が明るく、かつよく光り、独特の金属ぽいぽい光沢が実に実に美々しい。青色鉱物好きの理想の一つであろうと思う。単独の結晶もあるらしいが、残念なことにまだ見ない。経験則的に、二次鉱物の生成に関わる初生鉱物が銅以外の重金属(亜鉛、鉛など)を含む場合は、本鉱は出現しないという。

結晶構造は単斜晶系 (2/m)で、端部が斜めに切れた結晶形を示す。学名クリノクレースは、底面に平行に(斜めに)割れやすい性質からブライトハウプトが提唱したもの。原産地はコーンワル地方ウィール・ゴーランドのセント・デイ鉱山で 1830年の記載。ここはさまざまな珍しい二次鉱物の卸元として名を馳せたが、コーンワルのほかの鉱山と同様、すでに閉山して久しい。 現在市場に流通している標本はオーストラリアのブロークン・ヒル産やネバダ州北西部のマジューバ・ヒル産が定番。
マジューバ・ヒルは 1907年以来の銅鉱山で、さまざまな希産二次鉱物の産出で知られる。クリノクレースは十八番のひとつだが、アーサー石も有名である。

理想組成はCu3(AsO4)(OH)3 で、オリーブ銅鉱 Cu2AsO4(OH) やコーンワル石、コルヌビア石(Cu5(AsO4)2(OH)4 )に似た成分を持つ。上記の産地ではこれらが共産している(コニカルコ石 CaCu(AsO4)(OH) などとも)。 コルネット石 Cu3(PO4)(OH)3 はクリノクレースの燐酸塩版にあたるが、結晶系が異なる。同質異像にギルマー鉱がある。
比較的古くから知られた鉱物だけに異名が多く、 Abichite, Aphanese(非顕晶質の石), Aphanesite, Clinoclasio, Clinoclasite, Siderochalcite, Strahlenkupfer (放射状の銅) Strahlerz(放射状の鉱石) などさまざまに呼ばれた。学者方の間では銅の二次鉱物としては珍しく5配位のCu2+を持つことで注目されているらしい。

補記:ビューダンはギリシャ語の aphanes (いわく言い難い)に因んで、Aphanesite と呼んだ(1832)。識別が難しいことに拠ったという。

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