スペインの首都マドリードには鉱物標本を拝める公共施設が3つある。
博物分野全般を扱う総合施設である国立自然史博物館、スペイン地質鉱業会(IGME)に縁りのIGMEヘオミネロ(ジオ・ミネラル)博物館、マドリード鉱山学校に縁りのドン・フェリペ・デ・ブルボン・イ・グルシア鉱業史博物館である。
二番目のヘオミネロ博物館をするっと見学したので、簡単な紹介記事を書いておく。
この博物館は北部市街地のリオ・ロサス通りに面して建つ。地下鉄1番線のリオ・ロサス駅を地上に出て2、3分のところ。入館無料の有り難い施設で、写真撮影もOKである(ストロボの使用は禁止)。
スペイン各地、旧植民地(中南米、キューバ、フィリピン、西サハラ等)、また世界各地の著名産地に出た岩石・鉱物及び化石等の地質学・考古学資料を保管し、展示し、研究するための施設とされる。コレクションの基盤は
1849年に時のイザベル女王の命で創設されたスペイン地質地図製作委員会が調査資料として蒐集したもので、当時は複数の拠点に分散されていたが、博物館の建築(1925年落成)を機に
1929年にここに集合された。
鉱物標本は 16,000点強、岩石標本約1,000点、そして 55,000点の化石類標本を所蔵し、うち
18,000点が常設展示されている。(従って?、鉱物より化石類の展示が優越している印象がある。)
宝石展示は 159点、と著名な銘柄ダイヤ14点の複製品。
建物は歴史的価値のある立派なもので、それ自体見学に値する、とパンフに謳っている。1998年に保存文化建築物に指定されたそうだ。
建築装飾材にアンダルシア地方アルメリア産の白大理石(マカエル・マーブル/マカエルはアルメリアの町)が使われている。
タガネと槌の交差シンボルは、世界共通の鉱山マーク
一階の入り口からメインホールへ向かう通廊
メインホールを入った正面に鎮座するローズ・クオーツの大塊。博物館の銘板を嵌め込んだ目玉アイテム。
メインホール(一階部分/レベル0)の中央〜左翼。外周が鉱物・岩石関係で、内側はほぼ化石類の展示。別格扱いの大型ミネラルのキャビネットも。
右翼。こちらも外周が鉱物・岩石類で、内側は主に化石。キャビネットの総数は250を超える。
吹き抜けのホールの周囲の壁面に沿って2階、3階、4階の回廊があり、標本が展示されている。
ビジターが見学出来るのは2階(レベル1)と3階(レベル2)で、4階には上がれない。
中央に集まっているのはガイド・ツアーの参加者たち。グループ限定だが、事前に来館を予約して申し込んでおくとボランティアの方が対応してくれるらしい。
この建物が建築された頃(20世紀前半、二次大戦前まで)がスペイン鉱業の黄金期だった。
結晶面角測定器等のコレクション。メカメカしくて芸術的…
さまざまな地質調査・研究機器の類。下段はブラジル産の煙水晶と米国ユタ州産のいわゆるセプタリアン・ノジュール。
ブラジル、ミナス・ゼラエス州産の煙水晶。「カテドラル」と標識されていた。しかし私としては「ジャカレー」(ワニ水晶)といいたい。
ちなみにカトリーナ・ラファエルは第三著「クリスタル・トランスミッション」(1990)で、「カテドラル・ライブラリ」の呼称を与えた水晶を紹介している。(掲載された水晶の写真を見る限り、ギャラリー No.953の標本と同様の形状。)
いわく、「各部分は単一のクリスタルで、他の部分とほぼ同じ形をしており、どれもが一つに繋がっているか、あるいは相互に貫入したような外観を持つ。そして単一の先端を持つ大きなマザー・クリスタルを形成している。」「全体として単一の先端を持つクリスタルになっている」「カテドラル・ライブラリは透明か煙色かレモン色で、透明度の高いものが多い」
これはまあ説明として分からなくもないが、「カテドラル・ライブラリでは、クリスタルの内部の構造に二重らせんの運動が生じて、側面と上部に段差や分岐が形成される。この二重らせんの運動のゆえに、人間の思考様式を受信する一方で、宇宙の波動を受信することも出来る」と言われると、「運動って何?」、「その二重らせんはあらゆる水晶に本質的な構造なのでは?」と反論したくなる。
cf. No.941 (水晶の結晶構造)
上の標本は、透明度が低いし単一の先端を持っていないので、カテドラルではない、と愚考する。
どういう方たちなのか存知上げないが、スペインの鉱業ないし協会事業に貢献した人々の肖像と思われる。手前に女性ばかりの展示ポスターがあって存在感を示しているが、それぞれの研究分野を表すイラストになっているようだ。右から二番目上の女性が抱えているのは、巨大なベンツマーク形リチア・トリマリン(エルバイト)のスライス片、ではなくて地球の内部コアまでの断面模型。
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