782.ダトー石   Datolite   (メキシコ産ほか)

 

 

datolite

ダトー石 −メキシコ、サン・ルイ・ポトシ、Charcas産
ダトー石(微小な銅を含む)−USA、ミシガン州産
ボトリオ石(亜種)、ソーダ沸石に伴う
−愛媛県上浮穴郡久万町(現、久万高原町)高殿

 

No.776にダルネゴルスク産のダトー石を示したが、ここでは産地の異なるものをいくつか。

上の画像はメキシコ産。チャルカスは古くからの鉱山地域で、16世紀後半にスペイン人に発見されて以来、さまざまな金属鉱石が採掘されてきた。標本市場ではダンブリ石や方解石の産地として有名だが、塊状のダトー石も出て、時に数センチに及ぶ淡緑色のシャープな結晶がある。1980年代後半から90年代初に、ダルネゴルスク産と並んでかなり大量の標本が出回った。その後90年代半ばになると同じ地域のオーロラ鉱山から黄鉄鉱を伴う標本も出始めた。

2番目の画像はアメリカ産。自然銅で有名なミシガン州のキウィーノ半島に大量に産するもので、陶器質のノジュールになっている。切断して磨くとパステル調の美しい赤茶色のグラデーションが現れるので、あちらではラピダリー用に人気がある。この色は微小な自然銅の混入によるものと言われる。

3番目は日本産。ダトー石の産状の一つに、玄武岩など火山岩の空隙に、沸石や魚眼石等との共産があり、その一例。ぶどう状(ボトリオイダル)になっているため、Botryolite ボトリオ石の亜種名がある。マンガン発色を想わせる淡いピンク色をしている。やはり淡いピンク色の魚眼石の結晶を伴うこともある。この産地のボトリオ石は、当初ぶどう石か玉髄だと考えられたそうだが、実際見た目ではなかなか判断がつかない。
ちなみに Braunsの本では、ダトー石は沸石類と並べて紹介されている。沸石との産状の類似、熱すると(沸石ほどではないが)水分を放出すること、沸石同様に塩酸にあってゼラチン化することなどが述べられている(ただし成分系がまったく異なることも指摘されている)。

cf. No.859 ボトリオゲン

補記:愛媛県久万高原町は 1970年代に安山岩の石切り場から沸石類、方解石、魚眼石、ダトー石などの美晶が出た有名産地で、町場の北に国道33号線を挟んで東西に石切り場があり、東側が高殿(こうどの)、西側が槇の川である。ダトー石は当時槇の川に少量出たもので、沸石と共産する例は日本に珍しかった。またぶどう状のものは例がなかった。玉髄より柔らかく(硬度 5-5.5)、淡紅色のぶどう石も普通はないことから、化学分析が行われ、ダトー石と判定された経緯がある。
画像の標本は高殿産とのことで、その後こちら側でも出るようになったものか。ホリ・ミネさんのラベル付なので、鑑定は確かと思われるが。(私の見立てでは、ぶどう石ではないかと。)
cf. No. 533 ピンク色の魚眼石(槇の川産)

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