120.トパーズ Topaz   (ドイツ産)

 

 

歴史的標本? えへん。

トパーズ(淡黄色)と水晶(無色〜白色)−ドイツ、ザクセン、シュネッケンシュタイン産

 

トパーズという言葉が、もともとカンラン石(ペリドット)を指していたことはよく知られている。例えばAD1世紀、ギリシャのプリニウスは、紅海上にある霧生の島、ゼベルゲート(セント・ジョン島)をトパゾス、トパシオンと呼んでいた。ここは、はるか3,500年前から続くカンラン石の産地である。

では、いつからトパーズのことを正しくトパーズと呼ぶようになったのかというと、それがよく分からない。文献上は、ドイツ、ザクセン地方にある産地についての論文(1737年、ヘンケル)に現れたのが最初の例だという。
シュネッケンシュタインには18世紀初頃(1727年とされる)からトパーズを掘るための宝石鉱山ケーニヒス・クローネが開かれ、数世代に渡って美しいワイン・イエローの石が供給された。おそらくヘンケルは現地の人々の呼び名を聞いて、この言葉を採用したのだろう。
この地域のトパーズはグライゼン(及びペグマタイト)を起源としている。写真のような水晶を伴った結晶のほかに、結晶しない脈状トパーズもあって、アルテンベルク(シュネッケンシュタインに近い)の名産品となっている。(No.76参照)

ちなみに、トパーズ(和名は黄玉)という名称は、他種の黄色宝石にも援用されることがある。例えば、「黄水晶→フォールス・トパーズ、クオーツ・トパーズ、マデラ・トパーズ、シトリン・トパーズ」、「イエロー・サファイヤ→オリエンタル・トパーズ」、「イエロー・アンドラダイト→トパゾライト」、「煙水晶→スモーキー・トパーズ」といった具合だ。その昔、トパーズは、今私たちが思う以上に、貴重な宝石だったのである。

cf.No.756 (シュネッケンシュタイン)

note:From Sommer Klingenthal Collection, then  Bergakademie Freiberg in 1966

補記:博物誌6巻 34-169 「穴居族の国、これは以前ミドエと呼ばれたがミディオエと呼んだ人々もあった。「五指山」、「細首諸島」と呼ばれるいくつかの島々、ほぼ同じくらいの数のハロネシ諸島、カルダミネ島、トバゾス島−これはその名をあの宝石「トパーズ」に与えている。…」
同 34-170 「第三のペレニケは長く突出している地峡にある、そのところで紅海の口になっている海峡がたった七マイル半の間隔でアフリカをアラビアから引離しているというその位置ゆえに珍しい。ここにキュティス島があって、ここでもトパーズを産する。」 (中野訳)

追記:今日では薄青色(放射線処理)あるいはピンク色(パキスタン産)やオレンジ色(ブラジル産のインペリアル・トパーズ)のものに人気の集まるトパーズだが、かつては黄色の宝石の代表格だった。

アルビレオと言えば、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を彩る名高い観測所である。「青宝玉と黄玉の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわって」いる。現実の世界では白鳥座の三等星として知られ、肉眼で見ると一つの星だが、望遠鏡で見ると明るい黄色とやや暗い青色の二つの星に分かれてみえるらしい。トパーズとサファイヤ。天の宝石。
賢治が夜を書いた頃(大正末〜昭和初)は日本でも宝飾品がよく売れた時代(豊かだった時代)として記憶されているが、当時のトパーズは黄玉の名にふさわしい黄色い宝石だったのだろう。

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