157.ブロシャン銅鉱 Brochantite   (USA産)

 

 

Brochantite

ブロシャン銅鉱−USA、NM、ソッコロ産

Brochantite

ブロシャン銅鉱 −USA,アリゾナ州モレンシー産

 

ブロシャン銅鉱は、銅鉱床の酸化帯に生じる二次鉱物である。ウラル山脈のニジニタギルにあるメドノルジャンスカ銅山で孔雀石や自然銅に伴って産したものが研究されたのが初めで、1824年、 A.レビィによって命名記載された。銅山が(再)開発されて10年、宝飾品質の孔雀石が大量に掘り出されていた頃である(cf.孔雀石の話3)。その名はフランスの地質学者ブロシャン・ド・ビリエに因む。(ブロシャン博士と本鉱には別段の関係はないようである⇒cf. ターナー・コレクション

その後、各地でよく似た鉱物が発見され、いくつかは別種の鉱物と考えられた。ウラル産のKonigine、メキシコ産の brongniartine、アイスランド産の krisuvigite、 コーンウォールの warringtonite などだが、いずれも本質的にブロシャン銅鉱であることが判った。こうした(外見のやや異なる)類似鉱物を検討した結果、ブロシャン銅鉱と孔雀石とは微視的に密に共存して晶出する場合があることが分かった。また近年の研究によると、本鉱には2種類の多型(ポリタイプ)があり、普通に混在して産するそうだ。

孔雀石(やはり銅の二次鉱物)と比べるとブロシャン銅鉱の良標本を目にする機会は少ない。しかしその存在自体がレアというわけではなく、孔雀石として出回っている標本にブロシャン銅鉱が共存するケースが多々ありそうだという。銅や青銅に噴く銅錆(パティナ)の主成分はブロシャン銅鉱である(cf.孔雀石の話1)。

肉眼的な本鉱はふつう写真のように針状かつ放射束状に結晶集合しており、ときには柱状や板状の結晶になる。酸に溶けるが、孔雀石のように発泡はしない。色や形が紛らわしいが、この点を知っていれば識別可能だ。

組成式は、CuSO(OH)。これが少し変わってCuSO(OH)となったものが、次に挙げるアントラー石。ブロシャン銅鉱とアントラー石は、成分組成が近く、物性もよく似た鉱物である。産状が同じだと、ほとんど識別不可能という。
「昔は食べ物が腐らないように貯蔵の際に用いた」との説があるが、果たしてその通りか?

補記:ニューメキシコ州ソッコロ郡のハンソンバーグでは1987年に終焉を迎えるまでほぼ一世紀の間少量の金属鉱石が商業的に掘り出されていたが、その後は鉱物愛好家の渉猟跋扈する魔界となった。大きく3つの採集地域があり、ローヤル、メクス−テクス、ブランチャード鉱区に分かれる。ブランチャード鉱区はオラ・ワラス・ブランチャードという鉱物好きのご婦人が好意的で、訪問者によく便宜を図ってくれたものだという。
画像のような標本は 1987年以降、メクス−テクス鉱区の目玉品となった。ここでは 1996年初夏にブロシャン銅鉱を伴うスパンゴライトの良晶が出た。cf. No.576

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