286.金雲母 Phlogopite (アフガニスタン産)

 

 

金雲母−アフガニスタン、Sar-e-sang産
(紫外線で黄緑色蛍光)

 

マグネシウムに富み、鉄分に乏しい雲母で、黒雲母と連続的なシリーズをなす。色目が明るく、へき開面は銅箔に似た色と光沢を示す。学名の Phlogopite はギリシャ語の phlogopos 「炎のような」に由来し、和名はそのまま金色の雲母の謂い。
地下深所に存在する造岩鉱物として水分を含みうるものの一つ。火山岩(玄武岩など)中にも産するが、石灰岩や蛇紋岩の変成作用に伴うことが多い。(cf. No.190 エメラルドを伴う金雲母片岩)

上の標本は Sar-e-sang のラピスラズリ鉱山で採れたもので、苦灰石[CaMg(CO3)2 ]に接触した花崗岩マグマが、マグネシウムを取り込んで金雲母を形成したと考えられる。
この反応により苦灰石は方解石化(&大理石化)するため、金雲母と大理石が密接に共生した岩石(シポリン)が出来る。ラピス鉱山では片麻岩の上部に厚さ400mに及ぶシポリンがかぶさっており、ラピスラズリは白いシポリンの山を切る灰色のスカルン中に見出される。
ここの金雲母は高々2センチ程度の美しい結晶をなし、ある標本商さんに言わせると、ベスト標本である。柱面から眺めると、母岩が透けてみえるほどの透明度を持つ。ときに青金石に変化した風変わりな仮晶が見られることもあり、生成条件を考えると興味深い(参考)。

余談だが、ルチルを含むため、6条・12条のスター効果を持つ金雲母がカナダに出て、かつて星雲母(スター・マイカ)と呼ばれた。この名前は今、星型に貫入双晶した白雲母の愛称になっている(No.145)。多分名前が一人歩きしたのだろう。

補記:シポリン、シポリノ大理石−金雲母を含むため緑色の筋が入ったイタリア産の大理石(熱変成で巨晶化した方解石)。転じて、この種の雲母大理石の総称。大理石と雲母片岩とが接する境界域には、しばしばシポリンの層が生じている。

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