396.灰クロムざくろ石 Uvarovite (ロシア&フィンランド産)

 

 

Uvarovite

灰クロムざくろ石 −ロシア、ウラル地方産
(白色の方解石を溶かしてある)

Uvarovite

ウバロバイト −ロシア、ウラル産
(顕微鏡下で撮影)

uvarovite and pyrite

ウヴァロバイト(色が濃いので画像ではほとんど黒色) 
黄銅鉱(黄金色)やクロム透輝石(淡緑色)を伴う
−フィンランド、オートクンプ産

uvarovite and kaemmererite

クロム鉄鉱上のウバロバイト、菫泥石(パウダー状)を伴う 
−USA、CA、ジャクソンビル産
Dana's 8th には、CA州にはニュー・イドリア等
少なくとも20以上の産地があると記載されている。
ジャクソンビルでは蛇紋岩に伴って出るそうだが、
この標本はクロム鉄鉱を母岩としている。

 

灰クロムざくろ石(灰格柘榴石)は、デマントイドより緑色の濃いガーネットの一種である。

No.249で図示したように、アンドラダイト(灰鉄ざくろ石)あるいはグロッシュラー(灰ばんざくろ石)との間に連続的な固溶体シリーズを作る。言い換えれば、アンドラダイト(&デマントイド)の鉄よりもクロムが多くなった種、あるいはグロッシュラーでアルミニウムよりクロムが多くなった種ということが出来る。(※Dana 8th は、アンドラダイトとの間は連続でないとしている)

緑色は3価クロムイオンによる発色。結晶が大きくなると黒味を帯びる傾向があり、そのためむしろ小さな結晶の方がみめうるわしい。ふつう蛇紋岩に伴って産するが、ロシア・ウラル地方ではクロム鉄鉱の鉱床に出る。上のように方解石に埋もれていると結晶が比較的大きくなるのだが、それでも3ミリ程度に留まり、この産地に典型的な2番目の標本では1ミリ前後。だが、双眼実体顕微鏡で見ると透明感があって惚れ惚れする美しさだ。

下の標本はフィンランド産で、有名な銅鉱山に産する銘柄品。蛇紋岩や結晶片岩、珪岩などの地層に花崗岩が貫入してスカルン鉱床が形成された中に、蛇紋岩からのクロムを取り入れたざくろ石が出来ている。一般にロシア産よりサイズが大きめで、2cm大に達することがあるという。
画像の結晶は6ミリ程度だが、裏側には1cmの結晶が黄銅鉱に埋もれている(但し割れている)。破面に見せる錆を吹いたような緑色は、ロシア産のそれと共通する雰囲気があり、灰クロムざくろ石に特有の質感かと思う。
この産地は鉱床全体がクロムに染まっているそうで、共産する透輝石や透閃石もやはり緑色をしている。

ちなみにオートクンプは「悪魔の丘」あるいは「奇妙な丘」の意。堀博士の「スカンジナビア鉱物の旅」を読むと、鉱山(跡)は町はずれの低い丘陵地帯にあり、大鉱山だった名残の建物が広範囲に散らばっているらしい。随分前に閉山されて、一部は博物館になっているとか。 また、愛好家向けに開放された掘割りエリアがあると聞く。行ってみたいな。

cf. No.892 (日本の灰クロム柘榴石産地)

追記:現地を訪問された I さんによると、オートクンプは大平原の森林の中に突然あり、人々はムーミンが出てきそうな森の中に住んでいるとか。この産地の灰クロムざくろ石はかなり鉄分が多く、濃い緑色もその影響がありそう。キースラガー鉱床に蛇紋岩と石灰岩を伴って特殊なスカルンを形成しているが、キースラガー本体の規模や形態は別子鉱山と非常によく似ている。本山が終わった後も、支山のブオノス鉱床が採掘されていたが、これも今では閉山したらしい。以上、ご教示いただきました。ありがとうございます。

補記:クロム鉄鉱は組成 (Fe,Mg)Cr2O4 とされるが、理想成分に近いものは少なく、多くはクロム苦土鉱だという。かつて石英と共存しないと言われたが、1953年にフィンランドの特殊な変成スカルンから透輝石や石英と共存する例が報告された。中の画像がそれ。

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