462.青金石 Lazurite (ミャンマー産) |
上の標本。ミッチーナ産と標識されたカボッション石。色目は暗く濃い紺色。透明感のある大理石が混じる。
中の標本。カチン州産とだけ標識された原石。透明感のない苦灰岩にラピスの青い斑点が染みのように浮かぶ。
下の標本。我が見処に約せば、このうえないうぶな逸品である。
ショーでこの石を見つけて、もぎとるように攫いとった。躊躇う業者さんを抑えて手にとり、そのまま手離さなかったのだ。
これぞ、 「俺様最終究極奥義、ねこまっしぐらーーーー」(←マジレンジャー)
値段をつけてない標本は、俺様が値段をつけてしまうにゃん。
業者さんのお話によると、買い付けのとき、現地の協力者が「こんなものが出てきた」とただ1点持ち込んできたもので、見た通りムクに近い大塊だから、
これしかないわけないのだが、これしかなかったのだそうである。
従来ラピスが出ていたのと川を挟んで反対の山で偶然見つかった、というのだが、肝心の地名は業者さんの記憶から抜け落ちて、どう詮じ詰めても聞き出すことができなかった。
ただ、ミッチーナではないという。
氏が標本を手放したがらなかった理由のひとつは、「アウインが混じっている!」
ことだ?
たしかにこの標本にはアイフェル産のアウインに通じる鮮やかな青色透明の部分が散っている。それがアウインだというのだが、果たしていかに。
パミール高原のリャジバルダルやイタリアのベスビオ火山ではラピスとアウインの共産が知られているから、もちろんその可能性もあるわけだが、こんな色のラピスラズリがあっていけないわけもないと思う。標本を数見てくると、色も透明度も、ああ何にもあてにならない、という気がする。文献によると、三斜晶系のラピスは白色だそうだし。
この標本は銀色の雲母が噛んでおり、それが独特の趣きというか輝きを添えている。
懇意の標本商さんに見せると、産状を特異に感じたらしく、
「これは分析にかけましょうよ」と意気込まれた。でも、せっかくの大塊を欠きたくなかったので、うにゃうにゃ言って逃げた。
3点ともカチン州産としてあるが、それぞれタイプが違い、詳しい産地の状況はまったく不明。
ほかのソースからの追加情報があるかと庭に出すのを控えていたが、いまのところなし。でもそういうのこそ、私の胸をときめかさずにおかないものなのだ。好奇心をそそってやまないミャンマーの奥地。
なにかご存知のことがありましたら、どうぞお知らせ下さい。
補記:従来ラピスラズリとして知られてきたアフガニスタン産のラピスラズリ(ラズライト)は、実際には硫化性のアウインであるという。cf. No.250。ならば、下の標本にアウインが混じっているということはむしろ当然すぎるくらい、ということになろう。