193.硫黄  Sulphur (Sulfur)  (ポーランド産)

 

 

私のにおいを、卵の腐った臭い、という人がいますが、私は腐ってないよ。

硫黄 −ポーランド、タルノウィッツ産

 

硫黄は有史以前から知られていた物質だ。火山活動との結びつきや特有の匂いから神秘的なイメージが生まれ、錬金術ではあらゆる物質の根源にあるものと考えられた、とモノの本にある。

硫黄の塊を握って耳元に近づけてみると、カツカツと音が聞こえることがある(そうだ)。これは指先で暖められた硫黄の分子が折裂してきしむのだ、と科学は説明している。しかし、昔の人はこの音を硫黄に内在する命の証と受け止めたかもしれない。
あるいは、火山の噴気孔や温泉では、硫黄が迅速に成長して、ある種の植物(または苔)のような外観を呈することがある。
また試みに少量の硫黄をニ硫化炭素に溶かして顕微鏡下で観察すると、結晶が成長してゆく様子がはっきりと分かるそうだ。やはり硫黄は生きているのだろうか。この時、結晶は稜の部分が急速に成長するため、面の中ほどが窪んで見える。天然の結晶も同じ傾向にある。

硫黄は普通、綺麗な檸檬色だが、微量のセレンを含むと、写真のようにやや暗い黄色になる。日本でも、立山、硫黄島、阿蘇山などの硫黄は、セレンテルルのために黄褐色を示し、一名、赤硫石と呼ばれた。

cf. No.282 (シチリア島産)  No.302 (ポーランドの硫黄)   ヘオミネロ博物館4

cf. 硫黄は93.5℃以上で結晶構造が単斜晶系のベータ硫黄となる。実験室で溶融した硫黄をルツボから急に流し出すと、急冷によってルツボの壁に針状の結晶が残るが、温度が93.5℃以下になるとその形のまま結晶構造は普通の斜方晶に遷移する。cf.No.78 高温石英

大鉱物学」下巻より

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