248.灰ばん柘榴石 Grossular (メキシコ産)

 

 

でかい!

グロシュラー−メキシコ、シエラ・デラ・クルス産

 

今更だけれど、「鉱物」とは何か。
保育社の「鉱物・岩石」に、「天然に産する均質な固体物質で、ほぼ一定の化学組成と一定の原子配列を持つ。通常、無機的な過程で生成されたものである」とある。
だいたいこの定義でいいと思う。

以前には、地殻を構成する物質で…という条件もあったが、宇宙起源の鉱物も見つかっているので、今ははずされている。また、琥珀アイドリア石のような有機物も鉱物に含めて考えられることが多いし、鳥の糞などが鉱物化することもあるので、上の文章では、無機的な…の前に、「通常」、という但し書きがつくのである。

化学組成…の前に「ほぼ」とあるのも、実際の鉱物の化学組成がいつも一定であるとは限らないことを仄めかしている。というのも、たいていの鉱物はいくつかの元素が結合して出来ているが、性格(原子半径や何価のイオンを作るかなど)のよく似た元素は、互いに置き換えあうことがあるからだ。
例えば、No.244の灰鉄ざくろ石は、化学式 Ca3Fe2(SiO4)3 で記述されるが、Fe(鉄)の部分を Al(アルミニウム)が置き換えることがある。その場合、灰鉄ざくろ石の化学組成は一定にならずに Al が連続的に増加していく。Al が Fe より多くなると、灰礬ざくろ石(グロッシュラー)という別の鉱物になる。
こうした置き換えによって出現しうる、ある幅をもった中間的な組成の鉱物を固溶体と呼ぶ。また、純粋な灰鉄ざくろ石、灰礬ざくろ石(化学式 Ca3Al2(SiO4)3 )のようなものをその固溶体の端成分(たんせいぶん)という。成分が置換される割合は、しばしば生成条件(温度や圧力)によって決定されるので、その鉱物がどんな環境で生じたかを知る目安とされることがある。(例 No.127 閃亜鉛鉱、ダイヤモンド探鉱の指標鉱物となるパイロープ中のFe/Mg 率)

一見無味乾燥な定義も、こうして読むと慎重に言葉を選んで書かれているのが判り、なかなか味わい深いものではありませんか。
なお、「ある幅をもった」の表現も、鉱物によっては、100%連続的な変化でなく、限定された範囲で成分が変化することを暗示している。ふへへ。(例 No.136 バリスシア石、 No.155 ポウエル石)

cf. No.893 (ガーネットの分類表)  No.894 ラズベリー・ガーネット(シエラ・デ・クルス産)

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