13.ソーダ沸石&グメリン沸石 Gmelinite (オーストラリア産) |
沸石は、火成岩の裂け目やポケット(晶洞)に、鉱泉水が通って出来ることが多いという。ポケットがいくつも並んでいるようなところなどでは、同じ成分の鉱泉が流れたものと思われるが、ポケットごとに入っている鉱物種が違っていることもよくあるそうで、なんか不思議である。
写真の白いもやもやがソーダ沸石。細かい柱状の結晶が、玄武岩の裂け目を一面に覆っている。赤みがかったオレンジのもやもやが、グメリン沸石。おそらく出来た時は立派な結晶であったのだろうが、その後を通った泉水は、せっかく結晶した成分を溶かして持っていってしまったらしい。蝕像だらけで、なんだかよくわからない形になっている。(1999.3)
追記:メルボルンにほど近い、ビクトリア海岸沿いのフランダースの町のあたりには玄武岩の露頭があり、沸石類の結晶が産する。なかでもグメリン沸石の標本は世界でもっとも良いもののひとつだと言われている。グメリン沸石は原子配列の近い菱沸石と緊密に相互成長(平行連晶)しており、ピンク色が濃く透明度の低いものほど菱沸石を含む割合が高くなるらしい(一般にグメリン沸石の単独塊はマレ)。共産する沸石でスプレー状の針結晶はたいていソーダ沸石、ころっとした感じの結晶は方沸石である。(2016.12)
追記2: 1807年、ケンブリッジの W.トンプソンは、ベスビアス火山の外輪にあたるモンテ・ソーマ産の沸石標本の中から、肉赤色の結晶を識別してサーコライト Sarcolite
と呼んだ。肉色に因む。結晶形を調べたアユイはそれがサイコロ状であることを確認しつつ、方沸石
Analcime の亜種とみなした。
1809年にヴォークランはイタリア・ヴィツェンツァ産の同様の結晶を調べて、方沸石よりソーダ分に乏しく水分が多いことに気付いたが、世間では依然、方沸石の一種と考えられた。
1820年代半ば、イギリスのD.ブルースターは方沸石や菱沸石の研究に熱中していたが、T.アランのコレクションからアイスランド・グレナム産の同様の形状の白色沸石を得た。また
W.ハイジンガーからもヴィツェンツァ産の肉色塊状標本を含むこの種の沸石を得た。そして光学的特性を比較した結果、グレナム産とヴィツェンツァ産は方沸石とも菱沸石とも異なる性質の新種であるとした。そして
1825年、チュービンゲン大の化学教授 G.C.ギュメリンの名をとってグメリン沸石と呼んだ。彼との友情を記念し、当代の鉱物化学分析の第一人者と称えたのである。
No.536
に紹介したが、イタリアでは擬似サイコロ形状の方沸石を
Analcime tripuntei
と呼ぶ(ローカル名)。実際に方沸石なのか、あるいはグメリン沸石の場合もあるのか、私にはよく分からない。(画像の標本はいずれにしても石英に変化している。) (2020.9)