1029.水晶(平行連晶) Quartz, parallel Growth (パキスタン産) |
水晶の形を特徴づけるさまざまな要素を紹介してきたが、この標本はそのいくつかが複合して見られるもの。全体的に平板状である。
一番上の画像は主形の柱軸が上下方向になるよう配置してあるが、上側右半分の形から、柱軸に垂直な
3つのa軸の一つ(X軸)に沿って水平に伸びた平板晶ということが分かる(錘面の頂点が横に伸びて稜線をなす形)。
ただし単晶形でなく、2番目の拡大画像から分かるように、No.1018と同様の平行連晶形である。魚の「ぜいご」(楯鱗:じゅうりん)のような細かな面が横に連なっているが、肩の微小面(おそらく
x面)であり、錘面と柱面との間の大傾斜面との組み合わせによって⊂字形になっていると思しい。cf.
No.977 補記2の図
多数の「肩の小面」が連続して現れた連晶形は珍しい。
上側左半分は長い傾斜面をなしているが、 No.1028で紹介した錘面が発達した形である。下半分がすぼまった形から両錘形と分かる。
上下の中央あたりには柱軸の傾きを異にする単晶形が突き出している。その結晶面が分かりやすいように配置を変えて反射光を与えたのが
3番目の画像。整った「肩の小面」から右手水晶と分かる。柱面にはマクロモザイクが見られる。
同様の単晶形は裏側の面にも接合している。その様子を示したのが 5番目(一番下)の画像。この単晶形も右手水晶。すなわち、全体が右手水晶の平行連晶、及び傾軸的に接合した「複合形」をなしているのだ。おそらくは左手・右手の入り混じった複合核からランダムな方位に発達した多結晶体でなく、右手単晶核から発達して双晶的な配置に分枝したものと考えていいのではないか。cf. No.1005〜No.1012。
このように構成要素を認めて形状を解釈してゆけると、水晶を眺める楽しみは何層倍にも高まる。(当たっているかどうかはともかくとして。)