746.カラコライト Caracolite (チリ産)

 

 

Caracolite

カラコライト -チリ、タラパカ州 challacollo産

 

 

カラコレス石。組成式 Na3Pb2(SO4)3Cl。なんだか岩塩硫酸鉛鉱とを混ぜ合わせたような成分だが、燐灰石スーパーグループのうちのヘディフェングループに分類される鉱物である。そういえば結晶形は燐灰石に似ている。ただ六方晶系を基本とするスーパーグループの中で本鉱は唯一、単斜晶系の構造を持つ。ちょうど白雲母(単斜晶系)が擬似六方晶系の形態を示すように、カラコレス石もまた擬似的に六角柱状を呈しているわけだ。

原産地はアタカマ地方シエラ・ゴルダ、カラコレス付近のベアトリス鉱山で、 1886年に記載された。1870年に有名なカラコレス銀山が発見された土地である。名前は地名に因むが、カラコレスとはスペイン語でカタツムリ(複数形、単数形はカラコル)のことだから、多分あたりにはカタツムリ(の殻)に似た山々が展開しているのだと思う。本鉱を指輪物語風に和名にすると蝸牛石(かぎゅうせき)となろうか。
中国名は芒硝鉛鉱。芒硝(グラウバー塩・硫酸ナトリウム)と鉛を含む鉱物の意で、アタカマ地方が広大な乾燥塩原であることをも想わせる。塩素に富む鉛鉱床に二次鉱物として産し、水溶性のため溶けると塩分が抜けて、後に硫酸鉛鉱を残す。やっぱし〜(笑)。

画像の標本はタラパカ州 Challacollo 産。 Challacollo はチャヤコジョと読むようだが確信がない。 2004年頃盛んに市場に出回ったもので、数ミリ程度の明瞭な自形結晶が群れて、原産地標本よりはるかに見目良い品と評判になった。
Challacollo は港湾都市イキケの南西130キロ、オフィシナ・ビクトーリアから30キロにあり、ここから東にボリビアへ抜けると最近CMなどで人気沸騰のウユニ塩原に出られる。ついでにいうと南北アメリカ大陸最大の塩原はウユニで、第二がアタカマである。定期的な降雨のあるウユニ湖はCMに見るようにどこまでも平坦な地形が続くが、アタカマははるかに降雨に乏しいため起伏に富んだ地形が保たれている。だからカタツムリ山もあるわけだ。

Challacollo は古くから断続的に採掘が行われてきた鉱山地域で、その歴史は 1772年に遡る。Lolon 坑、ブエナ・エスペランザ、ワルキリア等の鉱山が知られている。典型的な浅熱水性の銀-金鉱床で、酸化によって生じたさまざまな金属鉱石(主に角銀鉱自然銀自然金、その他ベースメタルの酸化鉱)が見られる。脈石鉱物は石英、重晶石、カオリン土など。硫化鉱(方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、輝銀鉱)は1−2%程度に留まる。酸化帯は地表から約180mの深さまで及び、40〜180mあたりに銀が濃集した富鉱帯がある。
2004年初に本鉱を多産した lolon 坑の鉱脈はトンあたり242g の銀と0.4g の金を含むといい、現在開発中であるらしい。周辺に多くの銅鉱床が存在し、これらの開発も期待出来るという。もともとさまざまな珍しい鉱物が採集されてきた地域だが、今後もあてにしてよいのであろうかな。(2015.6.20)

※ちなみにトパーズの歴史的産地、ドイツ南東縁のシュネッケンシュタインも字義は「カタツムリの石」 cf.No.756

※組成式から見ると、カラコレス石=岩塩+硫酸鉛鉱+テナルド石

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