1032.水晶(肩の小面群) Quartz faces on the shoulder (ネパール産) |
ネパールの「ガネーシュヒマール」に産する水晶は、きわめて優れた空間浄化力を持つとの触れ込みでヒーリングストーン市場に高い人気を誇るが、自形結晶の形にばかり気の向いた観賞系鉱石愛好家(私のこと)にも、「はっ!」と思える標本が時たま目に入る。
主要3面(r, z,
m)以外の比較的マイナーな結晶面−特に肩の小面−が明瞭に発達しており、かつマクロモザイク構造を伴うために、複雑な幾何学的造形美を現出させたものがあるのだ。
一例をこのページに紹介する。この標本は5つの錐面が天頂で会合した風変りな結晶である(※普通は3つの
r面が会合し、3つの z面の頂点は結晶の天頂に至らないことが多い)。
残る一つの錐面は z面らしく低い位置に控えているが、これを z面とみなすと、一番上の画像の正面に見える錐面もまた
z面の配置にあたる。が、ご覧の通り、この錐面と下の柱面との間に大傾斜面があって、左肩に「肩の小面」が現れている。これは本来
r面下に生じるべきものだが、この標本では正面のほか、左右の(r面の配置にあたる錐面の下の)柱面にも「肩の小面」が認められる。このように連続して出現するのは形態的な(左手)ドフィーネ式双晶の特徴といえる。
しかも「肩の小面」は間に柱面や大傾斜面を挟んだ飛び地状になっている。マクロモザイク構造を持つためだ。No.967、No.976
にも類似の形態を紹介してあるので、併せて読んでいただければ幸い。
こうして俯瞰すると、No.1030や No.1031 で示した鱗形の小面は、上の結晶図で桃色に標識した「肩の小面」が単独で現れたものとみなすことが出来、一方、平行連晶的に連なると No.1029で示したように鱗形が連続した「ぜいご」形になるわけだ。ちなみに上に示した No.180の標本では、鱗形が横方向にも、また縦(柱軸)方向にも並んでいる。