1057.水晶 ラフな溶食面を伴う  Quartz, etched rough faces (USA産)

 

 

溶食面のある水晶 
−USA、アーカンソー州ガーランド郡ジェシービル、
ミラーズ山地、コールマンの鉱山産

 

上の画像の結晶面・溶食面の模式図
紅色は平頂面(c面に相当)、
藤色は錐面より緩やかな傾斜の溶食面('π等に相当)、
若竹色は不明瞭な溶食部

上の画像の上部の拡大画像

頭頂側から見下ろした結晶の様子
稜線が溶食してラフな面に化している。
結晶の右側に凹入部があるのは、おそらく群晶として
共に成長していた別の単晶と分離した痕跡
と思われるが、その部分にも面の成長が起こって
きわめて平滑な光沢面となっている。

上の画像の中央部の拡大図
いずれも z面の上部にある稜線の溶食部と思しいが、
柱軸に対する傾斜角はそれぞれ異なっている。

右側の柱部に細かな縦条線が並んだ面が見える

上の画像の上部の拡大
左側の柱面部の稜は糸面(ごく細い面)が生じている

約120度の凹入部を正面に見たところ。
光沢のある平滑な結晶面が複雑に
組合わさり、等高線状に連なっている。

上の画像の上部の拡大

 

錐面の頭頂部に平坦面、またその周辺に緩傾斜面を伴う紫水晶を No.1055No.1056に示した。単純な成長作用に加えて溶食作用が働いて生じたと考えられる。これらはレアな結晶面だが、普通の無色透明の水晶にも例があるので、米国アーカンソー州産を紹介する。この土地の産状は No.49で触れたが、熱水性の水晶が大量に出ることでつとに有名で、溶食を伴わない単晶は No.134のようにきわめて美しい結晶面・稜線を持つ。一方、 No.969No.986 に溶食の痕跡を示す標本を示したが、大傾斜面やレアな「肩の微小面」も見られる。

このページの標本はまた趣きを違え、メジャーな 3結晶面(r, z, m面)は平滑で光沢に富み、しかし本来の稜線部には溶食によって生じたとみられるラフな凹凸部/擬似面や、縦(柱軸)方向の条線が発達している。錐面の頭部付近に粗い擬似面がある。詳細は各画像にコメントしたが、補足すると緩傾斜面と柱軸との挟角は 54.5度、57度、63度、と三方でそれぞれ違っている。ちなみに 'π面 (0112)の理想挟角は 57.6度、'D面 (0225)は 63度、'ω面 (0113)は 67度だ。

一番下及びその一つ上の画像の凹入柱部に見られる結晶面(群)は、条線の傾斜から判断すると、大傾斜面〜柱面をなす領域と、各種の「肩の小面」が並んだ領域とに分けることが出来、分域を形成しているようだ。

 

ミラー指数(a1, a2,a3, c)で、 a1=-a3 系(r面の傾斜角が変化したタイプ)の面、及び a2=-a3系(z面の傾斜角が変化したタイプ)の面の概念図

錘面・柱面の配置に対して、柱軸周りに回転した位置にある傾斜面の分類概念。r面または z面の肩を作る結晶面。

 

No.947に、 Dana 7th Vol.3 (1962)で C.フロンデルが確実に存在するとした 112面について触れ、出現頻度によって、ごくごくふつうの面(VVC) 5種、ごくふつうの面(VC) 20種、ふつうの面(C) 16種、少し珍しい面(LC: 6例以上の報告あり) 19種、報告例の少ないレア面(R) 52種、の 5つに分類されていることを述べた。
これらを改めて主要 3面に対する関係(出現位置や角度の緩急)で分類してみると、以下のようになる。

■水晶の結晶面の種類 (Dana 7th に載る 112の確からしい面の分類)

頻度(報告数)ランク  VVC級> VC級> C級 >LC級 >R級 
VVC 5面、 VC 20面、C 16面、LC 19面、R 52面 

1.主要3面:r面(主錘面/正菱面体面)、z面(副錘面/負菱面体面)、m面(柱面)  VVC
 (比較的頻繁に見られる肩の2小面: s面、 x面) VVC
 (比較的頻繁に見られる大傾斜面: M面、Υ面、Φ面等…) VC

2.z軸に垂直な面 1種(c面)  R

3.r面(1 0 -1 1) の傾きを変化させた配置のもの 計34種 VC:6, C:4,LC:7,R:17
  r面より傾きの緩いもの(小傾斜面) 3種 (π, D, ω)
  r面より傾きの急なもの(大傾斜面) 31種 (j, i, l, M, h, Υ, e, d, ζ, Φ, ψ....) 

4.z面(0 1 -1 1) の傾きを変化させた配置のもの 計23種 VC:6, C:5, LC:2, R:10
  z面より傾きの緩いもの(小傾斜面) 2種 ('π, 'ω)
  z面より傾きの急なもの(大傾斜面) 21種 ('j, 'i, 'l, 'M, 'h, 'Υ, 'e, 'd, 'ζ, 'Φ, 'ψ....) 

5.r面側の傾斜面(柱面含む)を 反時計周りに 30度回転させた配置の面 3種 (a, ξ, s)。 順に R,C,VVC
※ aは柱面を回転させた配置、ξ(クシー)は r面を回転させた配置、 sは r面の倍の大傾斜 

6.z面側の傾斜面(柱面含む)を 反時計周りに 30度回転させた配置の面 3種 ('a, 'ξ, 's)。 順に R,LC,VC
※ 'aは柱面を回転させた配置、'ξは z面を回転させた配置、 'sは z面の倍の大傾斜。 'sはドフィーネ双晶によるものか?

7.r面側の傾斜面(柱面含む)を 反時計周りに 30度未満の角度で回転させた配置の面 計19面 VVC:1(x面), VC:3, LC:5, R:10
  ※柱軸に平行な面 2種(K, k)、 柱軸に平行でない面 17種 (x, α、u,y,n....) 

8.r面側の傾斜面を 時計周りに 30度未満の角度で回転させた配置の面 1種 ('x面) LC

9.z面側の傾斜面を 時計周りに 30度未満の角度で回転させた配置の面 計24種
  ※柱軸に平行でない面 (-'x, O, 'L,'ρ, G, 'u, τ, 'y....)。 VC:4, C:6, LC:3, R:11 

10.z面側の傾斜面を 反時計周りに 30度未満の角度で回転させた配置の面 1種 (-x面) R

この他、ほぼ存在すると考えられる面 (Probably Valid :PV級) として挙げられている 79種を同様に分類すると、
 3.r面(1 0 -1 1) の傾きを変化させた配置のもの 計14種
 4.z面(0 1 -1 1) の傾きを変化させた配置のもの 計8種
 5.r面側の傾斜面を 反時計周りに 30度回転させた配置の面 1種
 7.r面側の傾斜面を 反時計周りに 30度未満の角度で回転させた配置の面 計29種
 9.z面側の傾斜面を 時計周りに 30度未満の角度で回転させた配置の面 計27種

が挙げられる。

頭頂の平面(c面)はレア級に、z面の上部の 'π面は c級(π面は LC級)に分類されている。上に名称と挟角を示した 'ω面は(ω面も)レア級で、'D面は 112面のうちに入っていないが、PV級に含まれている(D面はレア級)。

cf. No.967 (微小な結晶面) 

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