588.紫 石 Purpurite  (ナミビア産ほか)

 

 

Purpurite 紫石 パープライト

パープライト−ナミビア、エロンゴ、ウサコス、サンダマブ・ペグマタイト産

Purpurite 紫石 パープライト

紫石 −アメリカ、コロラド州ラリマー郡、
パープル・ヘイズ・アンド・レインボウズ・エンド・クレイム、
クリスタル・クラウン産

 

パープライト(紫石)は紫色をした鉱物で、名前もその色に由来している。色のついた石を、赤石、青石、白玉、黄玉、緑玉などと呼ぶのと同じ発想であるが、それが学名たりうるところが面白い。
紫色の鉱物というと、一枚看板の紫水晶(アメシスト)のほか、暗青紫色の菫青石、赤紫色の菫泥石、赤み差す青紫色のタンザナイトコランダム、モーブ色のラベンダーひすい、赤紫色の杉石、ライラック色のハックマン石、やや酸化した銅藍ゲルマン鉱などを思いつくが、たいていは変種的なもので(紫水晶もいわば水晶の変種)、本質的に紫色の種というと案外見当たらない。
本鉱はアメリカ、ノースカロライナ州が原産で、1905年に命名されたが、それまで紫石という名前は空席だったのである。実際、一般的な岩絵の具に単独で紫色を呈する素材はない。一方、本鉱は赤褐〜紫色の条痕色を示すので、大量に合成すれば顔料に使える可能性がある。

紫石はマンガン(一部鉄で置換された)の燐酸塩という単純な組成を持ち、鉄分の優るものはヘテロス石と呼ばれる。風化によって生じ、元の鉱物であるリチオフィル石(LiMnPO4)にあって2価イオンだったマンガンが3価となり、同時に1価のリチウムイオンが排除されたものが紫石にあたる。
かつては中間的な変成物が独立種と考えられ、鉄シックラー石、シックラー石の名を与えられたが、後に否定された。
ほとんどの紫石の標本にはリチオフィル石の部分がまだ残っている。普通は塊状・粒状で産し、自形結晶もあるのかしれないが見たことがない。
そもそもリチオフィル石が珍しい鉱物なので、変成物の紫石も希産であるが、その美しい色がラピダリー市場で注目されたため、標本の入手難易度は高くない。上の標本はイダーオバーシュタインに行ったとき、大箱に山盛り入っていた石くれの中から拾いあげたもの。昨今ではいわゆるヒーリングストーンの一翼をも担っている。

天然の標本はあまり鮮やかな色ではないが、表面にかぶった茶色の皮膜は弱酸浴で除去することが出来、同時にやや金属光沢を帯びた紫色が強調される。標本の多くはこの処理によって、魅力度アップを図ってあるらしい。

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