588.紫 石 Purpurite (ナミビア産ほか) |
紫石はマンガン(一部鉄で置換された)の燐酸塩という単純な組成を持ち、鉄分の優るものはヘテロス石と呼ばれる。風化によって生じ、元の鉱物であるリチオフィル石(LiMnPO4)にあって2価イオンだったマンガンが3価となり、同時に1価のリチウムイオンが排除されたものが紫石にあたる。
かつては中間的な変成物が独立種と考えられ、鉄シックラー石、シックラー石の名を与えられたが、後に否定された。
ほとんどの紫石の標本にはリチオフィル石の部分がまだ残っている。普通は塊状・粒状で産し、自形結晶もあるのかしれないが見たことがない。
そもそもリチオフィル石が珍しい鉱物なので、変成物の紫石も希産であるが、その美しい色がラピダリー市場で注目されたため、標本の入手難易度は高くない。上の標本はイダーオバーシュタインに行ったとき、大箱に山盛り入っていた石くれの中から拾いあげたもの。昨今ではいわゆるヒーリングストーンの一翼をも担っている。
天然の標本はあまり鮮やかな色ではないが、表面にかぶった茶色の皮膜は弱酸浴で除去することが出来、同時にやや金属光沢を帯びた紫色が強調される。標本の多くはこの処理によって、魅力度アップを図ってあるらしい。