512.ジェード Jade (USA産)

 

 

Michigan Jade ミシガンジェード

圧砕構造を示すジェード(研磨面) 
-USA、ミシガン州、ロープス鉱山産

Michigan Jade ミシガンジェード

黄鉄鉱を伴うジェード(研磨面)
−USA、ミシガン州マルケット郡、イシュペミン近郊、ロープス金鉱山産

 

日本はかつて各地に金鉱山があった。周辺の川では今でも多少の砂金を浚うことが出来る。もちろん、どこでも同じように拾えるわけではない。釣りと同じように、砂金が集まって埋まっているポイントというものがあって、例えば、川が大きく湾曲している淀み(内側)だとか、葦草が茂る中州の草の根元などがよいという。
また、どんな川から砂金が出るかといえば、ひとつの目安として、「蛇紋岩が多く見つかる地層のあたりの川がよい」といわれている。

そういえば川床から軟玉を発見したエピソードにも、しばしば金鉱夫が登場する。
ニュージーランド南島ウェストコーストの軟玉も、カナダのフレーザー川流域の軟玉も、発見したのは蛇紋岩の転がる川を浚った金鉱夫たちだった(No.475No.478)。軟玉は蛇紋岩帯に伴うものであるし、金もそうなのだとしたら、なるほどさもありそうな組み合わせである。
アラスカのコバック川の軟玉は蛇紋岩帯から転がり出たものだし、カリフォルニア糸魚川のひすいと軟玉もそうだ。といって、玉の産地がすべて名だたる産金地というわけではないから、やはり目安ということになるだろうか。

ちなみに蛇紋岩は、もとはかんらん岩だった岩体から変成して出来ることが多いが(cf.No.331)、変成の程度によってさまざな鉱物が層をなして分布していることがある(ゾーニング)。その遷移のモデル的な傾向は次のようである。
蛇紋石→滑石−変成された蛇紋石→軟玉・透輝石→アンフィボール→斜灰れん石・ロディン石→炭酸塩化雲母化珪岩(当然、温度・圧力条件等に左右されるわけだが) 
質のよい軟玉は、ロディン岩(斜灰れん石)に伴って産する場合が多く、一方緑泥石が多い場合はあまり期待できないという経験則がある。こちらは軟玉を探すときのひとつの目安になりそうだ。

ここに載せた標本は、アメリカ、ミシガン州産のジェードである。ジェードという言葉は一般に玉類を指して、狭義には軟玉と硬玉であるが、広義には蛇紋岩から変成するさまざまな類似の岩石をも含む(上述の各種鉱物の混合体)。おそらく、これらも純粋な軟玉というより、やはりジェードと呼ぶほかない集合体なのだろう。
ミシガン州はの大産地として有名だが、マッキノウ半島北方のマルケット郡にはいくつかの金鉱山(初生鉱床)もあって、1845年にすでに産金の報告がなされている。そこはグリーンベルトとも呼ばれる蛇紋岩帯にほど近いエリアで、母岩に含まれる金は普通は極微粒、肉眼ではほとんど確認できない。採金のためには大量の岩体を掘り崩して製錬する必要がある。
ロープス・ゴールド鉱山はミシガン州でもっとも大きく、中断を挟みながらも、もっとも長く続いた州随一の金鉱山だった。産金量は約900kgという(確かでない)。
標本は肉眼サイズの金粒が見えるという触れ込みだったが、私としては見た感じ、結晶面や錆色からして黄鉄鉱(Fool's Gold: 愚者の金)だと思う。金は入っているとしても見えないくらい微小な粒だろう。

※黄鉄鉱や黄銅鉱など、金色がかったぴかぴか光る鉱石の粒を、金に見間違う人は昔も今も多い。西洋では Fool's Gold と揶揄されたりする。訳して、愚者の黄金、愚か者の金、馬鹿金などという。ちなみに日本流ではネコの金。(cf.No.285 黒雲母)

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