841.カタプレイ石 Catapleiite (カナダ産)

 

 

Catapleiite

カタプレイ石(透明結晶)と方解石(淡檸檬色) 
-カナダ、ケベック州モンサンチラール産

Catapleiite

カタプレイ石の結晶(六角板状)
-カナダ、ケベック、モンサンチラール産

 

カタプレイアイト(カタプレイ石)はローブン島で発見された種のひとつで、1849年ノルウェーの地質学者 パウル・クリスチアン・ウェイビーによって報告された。ナトリウムとジルコニウムの珪酸塩2水和物で、組成式  (Na,Ca,□)2ZrSi3O9・2H2O。カルシウムが優越したものは別種として灰カタプレイ石 Calciocatapleiite と呼ばれる(1964年記載、ロシア、バイカル地方原産)。両者は固溶体をなす。イットリウム、セリウム、ネオジム、サマリウムなどの希土類元素を多少なり含む。

希産種だがアルカリ深成岩中に比較的よく見られ、特にかすみ石-方ソーダ石閃長岩のペグマタイトに産して、美しい板状の結晶をなす。たいていはユージアル石から二次的に生成したものだが、スウェーデンのノーラ・カール(Norra Karr:北部圏谷) のアルカリ複合岩体に産するものは例外的に初生。

ローブン島はじめ、ランゲスンツ・フィヨルドやその東側のラルビカイト採石場では各地に塊状で産する。マイクロサイズの結晶も出るが多くはない。ユージアル石、方ソーダ石ソーダ沸石方沸石エジリンジルコンリューコフェン石、リンク石、エピジジム石ローブン石星葉石といった鉱物と共産し、その名はギリシャ語のカタ・プレイオス「多く(の鉱物)と共に」に拠っている。つねにさまざまな希産鉱物を伴うことが理由という。
なんかちょっと、「ええっ?」と訊き返したい気がするが、ウェイビーはそういう実感を持ったのであろう。一般に黄褐色〜淡茶色(ハチミツ色よりやや褐色味が強い)で、白色の方沸石に埋もれている。ウェイビーはカタプレイ石と共にこの複屈折性の鉱物を Eudnophite (内部が曇っていることに由来)として記載したが、後にブレガーが長石の混じった方沸石と判定した(1890)
共産鉱物のひとつに、1847年にシェーラーがランゲスンツのバーケビクから記載したユーコル石 Eucolite がある。これは長くユージアル石の風化物とみなされてきたが、最近は鉄ケント・ブルックス石 Ferrokentbrooksite の亜種に相当するものだろうとされている。両者は外観が似るが、カタプレイ石は強い複屈折性を示すことで区別出来る。薄い断片を作るとほぼ無色となり、これが
かすみ石閃長岩に伴うほかの(ユーコル石以外の)希産鉱物とカタプレイ石との識別法という。

以前はベニト石グループにまとめられ、その中で水和物としてカタプレイ石サブグループを構成していた。結晶構造はワデ石 (K2ZrSi3O9) と同じく、ZrSi3O9のフレームワークを持つ。基本的に六方晶系の特徴を示すが、常温下では厳密には単斜晶系で、139℃以上で六方晶系に遷移する。

標本としてはカナダのモンサンチラール産が有名。モンサンチラールと言えば一番人気はセラン石だろうが、カタプレイ石はこれに次ぐ品で、ミリサイズの疑似六角柱状結晶が豊富に出回っている。またヘマタイトによく見られる薔薇の花に似た集合体をなすことがあり、15cmに達するものが知られる。タン、ベージュ、茶色を呈することが多いが、小さな結晶には無色、淡黄色、橙、桃、青色もある。
かのジル・エノー氏は 1980年代半ばにプードレット採石場で花弁状の標本を採集しており、 90年代にかけて多数の良品を市場にもたらした。また 2003年には蛍石仮晶のカタプレイ石を含む晶洞を浚って、翌年のツーソンショーの話題をさらった。

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